Film Director Retsu Motoyoshi

#8
フィルムディレクター
元吉烈
ニューヨークで映画監督を目指し、インデペンデントで作品を創っている若き監督はたくさんいますが、そんなひとりである元吉烈さんにお話をうかがいました。日本で大学を卒業し、2006年に東京からニューヨークへ移り住み、今年2010年にSVA(School of Visual Arts)の映画科(映画演出専攻)を卒業した烈さん。現在はフリーランスで撮影・編集などをしながら、自身の作品を製作する日々に追われています。新作「the day, the summer」はブルックリンで行われたWilliamsburg International Film Festivalにて上映されました。
m: monocomplex
R: Retsu

m: なんで映画監督になりたいなと思ったんですか?

R: 映画は好きで昔から見てたんだけど、作ろうとは全然思ってなくて、日本の大学では社会学をやっていました。大学の時に青山真治監督の『ユリイカ』(2000年 日本)をみて、映画でこんなことできるんだなって。映画と社会がこういう風に結びつく、結びつけられるんだなって初めて思ったんです。その時この映画には今の自分とか、今の日本に起こってることがリアルに描かれていると感じて。それから映画の方が自分が表現できるなって思うようになりました。

m: アメリカに行こうというのはどこから始まったんですか?

R: 大学卒業するぐらい。就活とかは日本のテレビとか映画とかを狙ってたけど、就職氷河期だったこともあってなかなかうまくいかず、どうしようかなみたいな感じで。バイトとかしてたけど、このままいてもしょうがないし留学しようかなと。日本以外を見てみたいというのもあったし。ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年 アメリカ・日本)とか見て、アメリカ人が日本で映画撮るんだったら、日本人がアメリカで撮ってもいいじゃん、って。ガス・ヴァン・サントも影響受けたかな。『エレファント』(2003年 アメリカ)とか。

m: アメリカ来ていきなりSVA(School of Visual Arts)に入ったんですか?

R: いきなり。ちょっと大変だったよ。映画の知識は知ってた部分も少しはあったけど、実際の撮影では言葉が大切だから。一年目は英語に慣れながらなんとか付いていったっという感じ。今一緒に映画作ってるのも、学校のときの友達たち。アメリカの映画教育はクルーが大規模だよね。照明とかもなるべくいっぱいつけようみたいな。僕はなるべく少人数でやろうよみたいな、5人ぐらいで作ろうよって思うんだけど、みんな10人とか20人とか。それはそれで面白かった。映画を作るってすごく楽しい。撮影するのも楽しいし、編集するのも楽しい。完成したものはあまり見たくないけど、撮ってる、作ってる過程は最高に楽しい。

m: アメリカで映画をつくり続けてゆく?

R: それはまだ分からないけど、今アメリカに住んでいることで学べるっていうのはあると思う。日本で映画作ってる人も何人か知ってるけど、そういう人と違うことが見れてるかなと思う。難しいのはやっぱりいろんな違いかな、言葉の違い、文化の違い、結局こっちで作っていても、これって面白いの?って確信のない感じがずっと抜けなかった。3年間ぐらい。これってアメリカの人の生活なの?本当なの?みたいのが。だから日本のことも撮ってる。今やってるのは日本の結城紬(ゆうきつむぎ)っていう古い伝統の絹の織物を作ってる人の話。
アメリカにいながら日本のことを映画にしたりするのは、矛盾してるとは思うこともあるけど、でも日本に住んでるからって、日本のことがスゴく分かるわけではないでしょ。日本を離れたから見える日本の良さってたくさんあるし。

m: こんな映画が作りたい、ってあります?

R: 人が撮りたいかな。人に興味がある。社会とか、グループとか。面白い人を見つけて、その人が社会にどう関わってゆくかということもあるんだけど、それ以上に社会がその人をどういうふうに作っていくか、というのが自分の作品のテーマなのかもしれない。ドキュメンタリーだったら、ひとりでも撮れるから。そんなに予算も必要ないし。

m: ドキュメンタリーを創るときって、ある程度こう質問したらこういう答えが返ってくるだろうというのを予測してシナリオ書いていくんですか?

R: シナリオ的なモノは、なるべく持たないようにする。事前に流れを用意しすぎると、自然と相手の返答をコントロールしようとしてしまう事があるんですよ。まず撮って、撮ったものを何回もみて、こういうことを言いたいんだこの人、って理解しながら作っていく。だんだん自分が何を作ろうとしてるのか、分からなくなったりしてくるんだけど、でもだからこそ面白いと思う。

m: 現在2つ映画を創っているそうですね?

R: 両方ともドキュメンタリーです。ひとつの映画は(60分)テープが60本もあってね、編集するのが怖い(笑)。これはハンター・カレッジにいた友人が、卒業制作でミュージカルを全部プロデュースするっていうのを、全体のプロダクションの過程とか、練習とかを含め、インタヴューも交えながら本番までを撮っていくという内容の映画。舞台のメイキングがドキュメンタリー映画そのものという感じ。3ヶ月間ぐらいほぼ毎日撮影してた。自分の学校の授業ウマいことサボって時間つくったりして。
もう一本の方がさっきも話しに出た織物の話しで、25分ぐらいの映画。実はフェスティバルに出さない?って声がかかってます。

m: フェスティバルにノミネート!どんな作品ですか?

R: 地方で伝統的な織物をしている人達の話です。
茨城県の結城という街で、ドキュメンタリーとナラティブ(フィクション)の両方を撮りました。リサーチもかねてドキュメンタリーを先に撮って。主人公がいる訳じゃないんだけど、そこで働いている人達のインタビューがたくさんあります。
アメリカに来てから、日本の伝統文化が少しだけど気になりだした。結城紬って一着何十万円も何百万円もするんですよ。花火大会とかで若い人が着ている浴衣とは違う、全部手工業で作ってる最高品質の絹織物。でも、そういう商品はあまり売れなくなっている。僕としては、伝統とかは守っていくべきだと思うけど、同時にそんな高価なもの、需要がないなら衰退して亡くなっても仕方ないと思う。だから、実際にそこで働いている人、特に20代とか30代前半の人はなにを考えてるのか知りたくて。インタビューさせてもらった60歳くらいの方が「伝統というのは変化だ」と言っていて「あ、凄い名言」だな、と。そのまま頂いて「The Changing Tradition」というタイトルにしました(笑)。

それでフィクションの方は、実際にそこに住んでいるわけではない、僕の用意した役者さんがその現場で織物をしてる、っていう設定で架空の物語をつくりました。織物をしている主人公が10年ぶりに東京にいる友人に会いに行くっていう話。自分の人生にちょっと飽きて、会いに行くみたいな。
フィクションの方が先に完成したからそれを学校の卒業制作にしたんだけど、本当は同じテーマについて、フィクションの部分とドキュメンタリーの部分を両方を同時に見せるというコンセプトの作品。10月のフェスティバルで上映されるのはそのフィクションの方です。

Williamsburg International Film Festival 上映作品、「the day, the summer」のフライヤー

m: このドキュメンタリー作品の編集はどれぐらい時間かけてるんですか?

R: 一ヶ月くらいかな。ドキュメンタリーの編集は本当に大変なので、憂鬱になります。いろんな大変な過程を経て完成しても、もちろんその作品が評価されないこともあるけど、それより作品を世に出せなかったらその方がストレスだよね。描きかけの絵みたいな感じ。

m: 自分らしい作品作りを目指す烈さんですが、大成功したいとか名誉心は?

R: もちろんある。なにより映画でご飯食べていけたら一番良いですよ。この世界でご飯食べていけたら、それは一流ってことだし。でも今は自分の好きな作品を作って、フィルム・フェスティバルに出して、その結果をみて今後の方針を考えるという感じかな。誰かに見てもらえるって可能性は必ずあるはずだって思うから。


上映スケジュール
Williamsburg International Film Festival.
9/24 16:30 –
Knitting Factory Brooklyn
361 Metropolitan Ave, Brooklyn
NY 11211
http://www.willifest.com/

The New Filmmakers
10/13 19:00 –
Anthology Film Archives
32 Second Ave
New York, NY 10003
http://www.newfilmmakers.com/

1980年、東京生まれ。
早稲田大学で社会学を専攻し卒業後、2006年渡米。NYのthe School of Visual Arts、映画学科で映画演出を専攻し2010年卒業。
卒業制作の短編劇映画「the day, the summer」はNYのいくつかの映画祭にて公式出品される。
現在はフリーランスの撮影、編集としてミュージッククリップの制作に関わるなどしながら、
新作ドキュメンタリーの「The Changing Tradition」と「A Making of "Dream"」を編集中。

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書家
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フィルムディレクター
元吉烈
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