Photographer Maki Suzuki

#1
フォトグラファー
鈴木マキ
カメラという道具を使えば、頭に描いていたイメージを最大限に表現することができると思った。 ニューヨークって流行の最先端でありながら、ダサい面もあるでしょう。そのミックスされた感じというか、がちゃがちゃ感がすごくいいなと思うんです。 そう語るのはフォトグラファーの鈴木まきさん。 “やたらアメリカに憧れていた” 家庭で育ったことから、アメリカに興味をもつようになり、中学生でサンフランシスコ近郊のサンタクルーズで行われたサマーキャンプに参加。高校時代にはニューヨークへ渡り、スタテンアイランドに1ヶ月ほどホームステイした。写真を始めたのもその頃だ。

「高校では写真部に所属していました。といっても、趣味でスナップ写真を撮るくらい。当時、日本で話題だった若手の女流写真家・HIROMIXさんに刺激を受けて、見事流行に乗っかったんですよ」

卒業後の1999年6月、ファッションデザインを学ぶために単身渡米。ニューヨークから車で6時間ほど北にいったロチェスター工科大学(RIT)付属の語学学校に留学した。

「RITは写真で有名な大学だったのですが、当時はまったく写真に興味がなくて。ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションを学びたかったから、12月にはもうシティーに引っ越してきました。でも、入学に必要なTOEFLのスコアがなかなか取れなくって、勉強している間にファッションデザインに対する興味が薄れてきてしまったんです」

そんなときに見つけたのが、TOEFLなしでも入れるFITの continue educationという夜間プログラム。そこでDisplay Designを専攻し、10人規模で行うショーウィンドウのセッティングやスタイリングなどをとおして、ディスプレイの面白さと難しさを知った。

「アメリカのディスプレイデザインってチームワークが大切で、1人じゃなかなかできないんですね。でも、みんなリーダーシップを取りたがるから、すごくもめるし、まとまらない(笑)。 これは大変な世界だと気づきました」

ところが、これが転機となる。諦めかけたディスプレイデザインとファッションデザインと趣味だった写真、これら3つを融合させた結果、“ファッションフォトグラファー”という新たな目標を見出したのだ。

「絵を描いたりするのは苦手だから、ゼロから自分でつくって表現するというのは難しいけれど、既にある物をスタイリングしたり、組み合わせたりして自分の世界をつくることはできる。カメラという道具を使えば、自分の頭に描いていたイメージと同じようなモノを、最大限に表現することができるかなと思ったんです」

現在はヘアスタイリストのルームメイトとブルックリンに住んでいるマキさん。部屋の一角をスタジオとして使っている。

2003年、ニューヨーク市立大学ラガーディアコミュニティーカレッジに入学。コマーシャルフォト専攻科で、写真の基本を学んだ。

「ファイナルや卒業制作の提出前は、朝9時から夜まで、学校が開いている間はずっと暗室にこもったまま。数学や英語など、リベラルアーツのクラスも取らなきゃいけないから、卒業までに3年かかりました (笑)。卒業後も期限ギリギリでOPT(学生ビザのもとに出される労働許可)を申請。これまた期限ギリギリまで、作品をつくったり無理矢理仕事をもらったりして、クレジットづくりに奔走しました」

全部ギリギリだと笑うまきさんだが、実はしっかり者でもある。去年3月には、アート留学生憧れのOビザ(科学、芸術、教育、ビジネス、またはスポーツの分野で、卓越した能力を有する者に発給されるビザ)を、弁護士を雇わず低コストでゲットした。

「貧乏人は自分で動かないと! 大切なのは自分でその何かをやるか、やらないかですよね。今だってネットワークを広げるため、友人・知人が関わるギャラリーのオープニングレセプションにはなるべく足を運ぶようにしているし、有名なフォトグラファーや大きなスタジオのアシスタントにも応募しています。やっぱりいろんな人から教わりたいし、横のつながりもほしい。雰囲気づくりや撮影技術など、大きなセットアップでしか学べないこともあるんですよ」

日本のビストBMX専門誌「Pedal Speed NYC特集号」に掲載されたこの写真は、タイムズスクエアの中央に寝転がって撮った渾身の一枚。


フリーランスという立場を利用して、時間を有効的に活用しているまきさん。日本の商業写真や広告写真はマニュアルに従った、万人好みするモノが多いと感じている彼女が母国に戻ることは、当面なさそうだ。

「広告写真はビジネスだから、売れるような写真を撮るのも大切だとは思いますけど、日本には同じ雰囲気の写真が多い気がするんですよね。ニューヨークで活躍するフォトグラファーの作品は、自由と個性の強さを感じさせるし、純粋に見ていて楽しいんです。ヨーロッパのフォトグラファーはもっとアーティスティックで、好き放題やっているイメージ。たまにちょっと理解不能なのもあるけれど(笑)、刺激にはなりそうだから行ってみたいです」

とにかくいろんな人に会って、話を聞いて、触れて、インスパイアされることが大切

撮りたいモノを撮りたい—現代のファッション写真に多大な影響を与えた写真家Irving Pennや米国を代表するポートレート写真家Annie Leibovitzにインスパイアされ、自由な表現に憧れるまきさんのスタイルは、ナチュラル&ガーリーなファッションフォト。だが、実際の仕事はインディーズのCDジャケット撮影や店舗撮影など、自分の型に当てはまらないものが多いという。

「とくにインディーズのHip HopやR&B とかになると、ベタにジャラジャラ&ブリンブリンみたいな感じがいいという人もいるので……。葛藤はありますが、そういうのも上手く撮れて、クライアントが気に入ってくれたら、一つのスキルになると思うから、自分のスタイルは消して、彼らの求める雰囲気で満足してもらえる写真を撮るよう心がけています」

仕事ではクライアントのイメージが第一優先。リクエストを聞いてから、自分なりにリサーチし、話し合ってスタイルを決定する。ビジネスで撮るなら、商品を売るためのマーケットを考えなければならないと主張する彼女からは、プロ意識の高さを感じる。

「日本人って礼儀正しいし、真面目だから信頼されるんですよね。同じ仕事をさせても、日本人はオンタイムできっちり仕事してくれるっていうイメージが強いから、クライアントも安心して頼んでくれる。でも、そういう印象があるからこそ、尚更ちゃんとやらなきゃとは感じますよ。他の日本人たちに迷惑かけないように」

とはいえ、周りはアバウトなアメリカ人。写真スタイルの違い、仕事に対する姿勢の違い……仕事で生じたジレンマは、ポートフォリオ制作で解消する。

「自分のポートフォリオをつくるときはファッションメインで好き放題やっています。ルームメイトもそうなんですが、ニューヨークにはヘアスタイリストやメイクをやっている日本人がいっぱいいるでしょう。そういう人と知り合って、エージェンシーからモデルを借りて、一緒に作品をつくり上げるのは、すごく楽しいですね」

そうして生まれた作品を武器にして、年内になるべく雑誌、それもアメリカで出版されているものに、ファッションフォトグラファーとして写真を出す—それがまきさんの目標だ。

「ローカルな雑誌でも構わない。私がやりたいファッションの写真、作品を世に出したいんです。将来的には、今より大きなスタジオをニューヨークにもてたらいいですね」

自分で機材とか運ばなくてもいいように、ガタイのいい男の子のアシスタントも雇わなきゃと笑う彼女だが、同じようにこの地で活躍することを夢見る人たちには、ソーシャライズの必要性を真剣に訴えた。

「私のこれからの目標でもあるんですけど、ジャンルを問わず、とにかくいろんな人に会って、話を聞いて、触れて、インスパイアされるのが大切だと思います。とくにアメリカのアーティストネットワーキングは親切で、気軽に人を紹介してくれるから、人脈もどんどん広がっていきますよ」

すずき・まき 1981年、静岡生まれ。1999年に渡米し、2007年ニューヨーク市立大学ラガーディアコミュニティーカレッジのコマーシャル フォト専攻科を卒業。Iran Rubin氏などのアシスタントを務める傍ら、フリーランスのフォトグラファーとして、ミュージシャンのプロモーション用写真やCDジャケットを撮影。 『自転車日和』や『Pedal Speed』といった日本の専門誌でも活躍している

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